高校生の夏期講習は必要?費用相場と「取らない」判断基準を解説
高校生の夏期講習は、結論から言えば基本的に必要ありません。受験勉強とは、志望校に必要な参考書を自習で仕上げる作業であり、講習を受けること自体が点数になるわけではないからです。むしろ講習は復習のコストが重く、受けただけで身についた気になってしまう危険があります。「受けたのに伸びなかった」という結果になりやすいのが、夏期講習という形式です。
とはいえ、これは「全員が取るべきではない」という話ではありません。取ったほうがいい人も確かに存在します。この記事では、大手予備校の費用相場を実際の金額で示したうえで、取るべき人・取らなくていい人の判断基準をお伝えします。竹内個別は夏期講習を実施していないため、講習を売る立場からは書けない内容になっています。
この記事でわかること
- 高校生の夏期講習が基本的に必要ない理由(復習コストの問題)
- 大手予備校の夏期講習の費用相場と、高3が支払う総額の目安
- それでも夏期講習を取ったほうがいい人の条件
- 夏期講習を取らない場合、夏に何をすべきか
- 「夏期講習だけ通う」という選択肢の是非
高校生に夏期講習は必要?

基本的には必要ありません。受験で成果を出すために本当に必要なのは、志望校に必要な参考書を必要な分だけ自分で進めることだからです。この作業は、講習を受けているあいだは止まってしまいます。つまり講習の時間が増えるほど、自分の参考書が進む時間は減っていきます。この関係を理解しないまま申し込むのが、最もよくない選び方でしょう。
もちろん、講習にまったく価値がないと言いたいわけではありません。ただし「夏だから講習を取るもの」という前提で申し込むと、お金と時間の両方を失うことになりかねません。まずは判断基準を持つところから始めましょう。判断基準さえ持っていれば、講習は使える道具にもなります。問題は、基準を持たないまま周囲に合わせて申し込んでしまうことです。
結論:受験は自習で参考書を進める作業
竹内個別は、受験勉強を「志望校に必要な参考書を、受験当日までに仕上げる作業」と定義しています。質の高い授業を受けることでも、進学校に通うことでもありません。合格を決めるのは、大学ごとに決まった問題集を仕上げられたかどうかです。どれだけ良い授業を受けても、問題集が仕上がっていなければ点数は動きません。
この定義に立つと、夏期講習の位置づけがはっきりします。講習は参考書を進めるための手段のひとつであって、目的ではありません。手段が目的にすり替わると、「講習に通っている」という事実だけで安心してしまいます。しかし模試や入試で問われるのは、通った日数ではなく解ける問題の数です。ここを混同すると、努力の方向そのものがずれてしまいます。

なぜ竹内個別は夏期講習をやらないのか
竹内個別では夏期講習にあたる講座を実施していません。理由は単純で、生徒の成績を上げるうえで優先度が低いと考えているからです。同じ時間とお金を使うなら、自習の質を上げる仕組みに投資したほうが結果につながると判断しています。具体的には、計画作成と進捗管理に振り向けるという設計です。講座を売らないぶん、必要かどうかを客観的に判断できます。
塾にとって夏期講習は大きな収益源です。そのため多くの塾のサイトでは「夏は受験の天王山」「講習で差がつく」という言葉が並びます。これは間違いではありませんが、差がつくのは講習を受けたからではなく、夏に勉強量を確保できたからです。両者は似ているようで、まったく違います。講習に通っても勉強量そのものが増えなければ、差はつきません。
この記事が「取らなくていい人」の条件まで書けるのは、竹内個別が講習を売っていないからです。判断材料として読んでいただければと思います。自社の商品を勧めるための記事ではないため、塾にとって都合の悪いことも書いています。判断の材料だけ持ち帰っていただければ十分です。実際に取るかどうかは、ご家庭で決めてください。
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高校生の夏期講習の費用相場はいくら?

大手予備校の場合、1講座あたり16,000円〜29,800円が目安です。高3が複数講座を取ると、総額で10万円〜30万円程度になるケースが多くなります。まずは実際の金額を見てみましょう。金額を把握しないまま「夏だから」という理由で申し込むと、後になって家計に効いてきます。まずは相場を知ることが、判断の第一歩になるでしょう。
大手予備校の1講座あたりの料金
主な予備校の夏期講習は、1講座単位で申し込む方式が一般的です。公開されている料金は次のとおりになっています。複数の講座を組み合わせて受講する仕組みのため、取る講座数によって総額が大きく変わります。単価だけを見て安いと判断しないよう注意してください。学年やコース、校舎によっても金額は変動します。以下は代表的な例です。
| 予備校 | 1講座あたりの料金(税込) | 講座の構成 |
|---|---|---|
| 河合塾 | 22,700円(塾生 22,200円) | 90分×5講 |
| 駿台予備学校 | 19,900円〜29,800円 | 50分×6〜12 |
| 代々木ゼミナール | 16,000円 | 90分×4回 |
(出典:河合塾 夏期講習 受講料・お申し込み方法、Ameba塾探し「夏期講習の費用は1講座1.2万〜2.8万円程度」/2026年7月時点)
注目してほしいのは、1講座がおよそ90分×5回、つまり合計7時間半程度だという点です。22,700円を7時間半で割ると、1時間あたり約3,000円になります。この単価が高いか安いかは、その7時間半で何を得られるかによって決まります。時給3,000円の家庭教師を7時間半つけるのと、どちらが自分に合うかを比べてみてもいいでしょう。
高3が5講座取ると総額はいくらか
問題は、1講座では済まないことです。英語・数学・国語の主要3科目に加えて、志望校別対策や共通テスト対策を足していくと、あっという間に5講座を超えます。パンフレットを見ていると、どの講座も自分に必要なものに思えてくるからです。ここで歯止めをかけられるかどうかが、総額を大きく左右します。上限を決めてから選ぶことをおすすめします。
5講座を受講した場合の総額は、およそ10万円です。複数の講座を取る受験生の場合、総額で10万円〜30万円ほどかかるケースが多いと報告されています(出典:Ameba塾探し)。さらに、これは夏期講習だけの金額です。冬期講習や直前講習を加えれば、年間の講習費はさらに膨らみます。
ここで一度立ち止まって考えたいのが、その10万円が「何時間分」なのかということ。5講座なら約37時間です。夏休みに確保できる勉強時間を仮に400時間とすると、そのうち1割弱が講習の時間になります。残りの9割をどう使うかのほうが、結果への影響は大きいでしょう。講習は夏の一部でしかない、という視点を持ってください。
高3の1年間の学習費に占める割合
公的な統計を見ると、講習費の重さがさらにはっきりします。文部科学省の調査によれば、公立高校3年生の補助学習費は年間で約28万5千円です。私立高校3年生では約30万5千円となっています(出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」図5・令和6年12月25日公表)。これは全国の高校生の保護者を対象にした調査の平均値です。
補助学習費とは、学習塾費・家庭教師費・参考書代などを合わせた金額のこと。つまり高3の家庭が1年間に教育のために支出する自習系の費用が、平均で約28万円ということです。ここに夏期講習で10万円を投じると、年間予算の3分の1以上を夏の1ヶ月に使う計算になります。秋以降にも冬期講習や直前講習が控えていることを考えると、配分としてはかなり偏っています。
もちろん、それだけの価値があるなら投資する意味はあります。ただし「みんな取っているから」という理由で10万円を出す前に、その講座で何を得るのかを言語化しておくべきでしょう。「英語が不安だから」ではなく「英文法の仮定法が抜けているから」というレベルまで具体化できていれば、その投資は機能します。逆に言語化できないなら、いったん保留にするのが賢明でしょう。
夏期講習が身につかない3つの理由

竹内個別が夏期講習を推奨しない理由は、金額の問題だけではありません。そもそも身につきにくい構造があるためです。ここでは3つの理由を説明します。いずれも、講習という形式そのものが抱えている構造的な問題です。特定の予備校の質が悪いという話ではありません。むしろ授業の質が高くても起こります。順に見ていきましょう。
理由1:復習のコストが重い
講習を受けると、その内容を自分のものにするための復習が必要になります。90分の授業を消化するには、最低でも同じくらいの復習時間が必要でしょう。5講座を取れば、授業37時間に加えて復習が37時間。合計で74時間が講習関連に消える計算になります。授業料を払っているのは37時間分ですが、実際に拘束される時間はその倍だと考えてください。
問題は、この復習が後回しにされやすいことです。夏期講習は日程が詰まっているため、復習が終わらないうちに次の授業が来ます。結果として「授業は受けたが復習していないノート」が積み上がっていく。これが勉強した気になるだけで終わる最大の原因です。ノートは増えていくのに、解ける問題は増えていないという状態になります。
しかも復習していない授業は、記憶に残りません。半年後の入試本番で、その90分の内容を思い出せる受験生は多くないでしょう。時間もお金も投じたのに、点数につながらないという結果になります。1回聞いただけの内容が半年後に残っている人は、ほとんどいないでしょう。授業の価値は、その後の復習量で決まります。聞いた記憶と、解ける実力はまったく別物だからです。
理由2:「凄そうな技」は本番で使えない
夏期講習では、講師が印象的な解法やテクニックを紹介することがあります。聞いている最中は「なるほど」と感動しますし、賢くなった気持ちにもなるものです。しかし、その技が本番で使えるかというと、話は別になります。むしろ、感動した記憶だけが残って解法は残らないことのほうが多いものです。理解と定着は、まったく別の工程だからです。
理由は、テクニックが使えるようになるには反復が必要だからです。1回聞いただけの解法は、試験のプレッシャーがかかる場面では出てきません。むしろ、手が勝手に動くレベルまで練習した典型的な解き方のほうが、確実に得点につながります。試験中は緊張で思考が狭くなるため、練習していない手は出てきません。本番で使えるのは、体に染み込んだ解き方だけでしょう。
竹内個別の方針は明確で、地味でも同じ参考書を何周もしたほうが本番で活用できるというものです。派手さはありませんが、こちらのほうが再現性があります。料理にたとえるなら、有名シェフの技を1回見るより、家庭料理を10回作るほうが確実に作れるようになるのと同じでしょう。派手さのなさは、この方法の弱点ではなく特徴です。
理由3:講習の時間だけ自習が止まる
見落とされがちなのが、機会費用の問題です。講習に行っている時間は、自分の参考書を進める時間ではありません。移動時間も含めれば、1講座あたり半日近くが埋まる日もあるでしょう。授業90分のために往復2時間かければ、実質的には半日を使ったのと変わりません。地方在住の受験生ほど、この負担は重くなります。支払っているのは受講料だけではありません。
夏休みは受験生にとって、まとまった自習時間を確保できる唯一の期間です。学校がある時期には、平日3時間程度しか確保できません。その貴重な期間を、他人の設計したカリキュラムで埋めてしまうと、自分に必要な参考書が進まなくなります。自分に必要なものと、講座で扱う内容が一致しているとは限りません。一致していない部分は、そのまま損失になります。
志望校ごとに必要な参考書は決まっており、そこから必要な勉強時間も決まります。この総量を消化することが受験勉強の本体です。講習はその総量を減らしてくれるわけではなく、むしろスケジュールを圧迫する側に働くことが少なくありません。講習を取るなら、この総量が終わる見込みがあるかを先に確認してください。終わらない設計のまま講座を足すのが、最も避けたい形です。
▶ 関連記事:数学の参考書ルート|志望校別3ステップで迷わず完走する方法
それでも夏期講習を取ったほうがいい人

ここまで否定的な内容が続きましたが、夏期講習が有効なケースも確かにあります。全員に不要だと言うつもりはありません。次の3つに当てはまる場合は、検討する価値があるでしょう。重要なのは、自分がその条件に当てはまるかを冷静に見極めることです。周囲が取っているかどうかは、判断材料になりません。当てはまるなら、迷わず検討して構いません。
自習の習慣がまったくない人
家で1時間も机に向かえない受験生の場合、講習には「強制的に勉強する時間を作る」という価値があります。自習ができないなら、参考書を何冊持っていても進まないからです。どれだけ正しい計画を立てても、実行されなければ成績は動きません。まずは机に向かう時間を物理的に確保することが先決になります。勉強しないという状態を脱することが、この段階の目標になります。
この場合、講習の中身よりも「決まった時間に決まった場所へ行く」という枠組みのほうが重要になります。生活リズムが崩れやすい夏休みに、外出する予定が入ること自体が効果を持つでしょう。ただし、これはあくまで応急処置です。最終的には自習の習慣を作らなければ、秋以降に同じ問題が再発します。あくまで習慣づくりの足場として使ってください。
特定分野だけ独学で突破できない人
もうひとつは、独学で明確に詰まっている分野がある場合です。たとえば数学のある単元だけどうしても理解できない、英文解釈の考え方が独学ではつかめないといったケースが該当します。独学の弱点は、間違った理解のまま進んでも気づけないことにあります。ここは人に教わる価値が出る場面でしょう。つまずきの箇所が自分で言える状態かどうかが分かれ目です。
このときは、その分野に絞って1講座だけ取るという使い方が有効でしょう。重要なのは「詰まっている箇所が特定できている」ことです。何が分からないか分からない状態で講習を取ると、結局どの授業も自分に必要だったのか判断できないまま終わります。逆に、詰まりが特定できているなら、その解消だけを目的に投資する価値はあります。
学校の補習など無料で受けられる場合
学校が実施する夏期補習は、多くの場合無料か、非常に安価です。この場合、費用対効果の計算式が変わります。予備校で10万円払う講座と、学校で無料の補習では、判断基準が同じであるはずがありません。支出がゼロに近いなら、多少効率が悪くても損失は限定的だからです。判断のハードルは大きく下がります。まずは学校の補習内容を確認してみてください。
学校の補習を検討するときのポイントは、参加が自習時間をどれだけ削るかです。午前中だけで終わるなら、午後をまるごと自習に使えます。一方で1日拘束される形式なら、その日は自分の参考書が進まないことになる。時間割を確認したうえで判断してください。担任の先生に、参加が必須かどうかを確認しておくのも有効です。
夏期講習を取らない場合、夏に何をすればいいのか

講習を取らないと決めたなら、その分の時間とお金を自習に振り向けることになります。ただし「自習してください」だけでは、何をすればいいか分からないでしょう。ここでは3つのステップに分けて説明します。浮いた10万円を参考書に使えば、必要な問題集はすべて揃うはずです。あとは、それをどう回すかという設計の問題になります。
志望校から必要な参考書を確定させる
最初にやるべきは、志望校に到達するために必要な参考書を確定させることです。竹内個別では、大学ごとに「合格問題集」を独自に定めています。志望校が変われば、こなすべき参考書のリストも変わるという考え方です。ここが曖昧なままだと、夏のあいだ何を優先すべきかが決まりません。逆に確定していれば、迷う時間がゼロになります。
たとえば数学なら、地方国公立やMARCHレベルは青チャートで足ります。旧帝大レベルならハイレベル数学の完全攻略、東大京大や上位国公立医学部なら上級問題精講まで必要になるでしょう。ここが決まっていない状態で夏を始めると、何をどれだけやればいいかが分かりません。まずは志望校を仮でもいいので決めることが、出発点になります。
参考書は基本的に、学校で配られたものを使えば十分です。チャート式でもフォーカスゴールドでも構いません。わざわざ買い替える必要はないというのが竹内個別の方針になります。新しい参考書を買うと前に進んだ気持ちになれますが、点数は1点も動いていません。買い足す前に、手元の残量を数えてみてください。買うより先に、やり切ることを考えましょう。
1冊を何周もする
参考書が決まったら、次は周回です。1周して終わりにせず、解けるようになるまで繰り返します。ここが夏期講習との最大の違いになるでしょう。講習が「新しい内容を入れる」場であるのに対し、周回は「入れた内容を出せるようにする」作業です。入試で問われるのは後者になります。ここを取り違えると、努力が点数に変わりません。周回こそが自習の中心です。
多くの受験生が誤解しているのは、参考書は買った時点では1点にもならないということです。成績になるのは「解けるようになったとき」だけ。中途半端な参考書を5冊持っているより、完璧に仕上げた1冊のほうが確実に点数につながります。冊数は実力の証明にはならない、と考えてください。棚に並んだ参考書の数と、模試の点数は比例しません。
竹内個別が入試で最も重視しているのは、典型問題を100%取り切ることです。難問はそもそも出題頻度が低く、ミスをしても他の受験生と大きな差はつきません。ここで「基本問題」ではなく「典型問題」と呼んでいる点に注意してください。典型問題は簡単という意味ではなく、出題されるパターンが決まっている問題という意味です。
進捗を管理する仕組みを持つ
3つ目が、進捗を管理する仕組みです。自習の最大の弱点は、進んでいるかどうかが自分では分からなくなることにあります。ここを放置すると、夏の終わりに「思ったより進まなかった」という結果になりがちです。人は自分の進捗を実際より多く見積もる傾向があるためです。記録を残さないかぎり、この誤差は修正されません。
竹内個別では、1日単位・ページ数まで具体的に指定する計画を作成しています。「今日はこの参考書のこの範囲まで」というレベルまで落とし込むことで、迷う時間をなくすという考え方です。実際、E判定で三日坊主だった生徒が、この方法で計画を回せるようになり筑波大学に合格しています。やる気に頼らず、迷う余地をなくすという発想です。
自分で管理する場合も、考え方は同じです。週単位ではなく日単位で、しかもページ数まで決めてください。曖昧な計画は、実行されない計画とほぼ同じ意味になります。「今日は数学を頑張る」ではなく「青チャートの例題120から140まで」と書いてください。この差が1ヶ月後の進捗を分けます。手帳でもアプリでも、続けられる方法で構いません。
▶ 関連記事:勉強計画の立て方|入試日から逆算する5ステップで合格をつかむ方法
「夏期講習だけ通う」はアリ?

アリです。ただし目的をはっきりさせる必要があります。「夏期講習だけ通う」という選択肢が有効になるのは、授業そのものより学習環境を手に入れたい場合でしょう。逆に「なんとなく不安だから」という理由で申し込むと、費用に見合う成果は得にくくなります。目的が決まれば、必要な講座数も自然と決まるはずです。何のために通うのかを、申し込む前に言葉にしてください。
自習室目的なら選択肢になる
多くの予備校では、講習受講生も自習室を利用できます。家で集中できない受験生にとって、これは大きな価値を持つでしょう。エアコンの効いた静かな場所で、周囲も勉強している環境に身を置けるからです。夏の自宅は誘惑が多く、冷房代もかかります。場所代として考えれば、講習費が割高とは言い切れない面もあるでしょう。
この場合、講座数は最小限で構いません。自習室の利用条件を満たす最少の講座を取り、残りの時間はすべて自分の参考書に使うという設計になります。授業を目的にするのではなく、場所を目的にするという発想です。1講座で自習室が使えるなら、それが最も効率のよい使い方になります。授業はおまけ、と割り切って構いません。
ただし、自習室が使える条件は予備校によって異なります。講習生でも使えるのか、期間はいつまでか、席は確保できるのかを事前に確認してください。ここを確認せずに申し込むと、想定していた環境が手に入らないという事態になりかねません。申し込み前に、校舎へ直接問い合わせておくのが確実です。繁忙期は席が埋まることもあるため、そこも聞いておきましょう。
ただし復習時間とセットで考える
もうひとつ注意したいのが、講座を取る以上は復習時間が発生することです。授業を受けっぱなしにすると、前述のとおり記憶に残りません。自習室を目的にする場合でも、この点は変わりません。復習しない講座は、ただの出費になってしまいます。授業と復習はセットで時間を確保する必要があります。取る前に、その時間があるかを確認してください。
したがって「夏期講習だけ通う」場合も、講座数は絞ったほうが結果的に効率が上がります。3講座取って復習が回らないより、1講座に絞って完全に消化するほうが得点につながるでしょう。講座数は多いほどよいという発想を捨てることが、この選択肢を活かすコツになります。少なく取って深く消化するほうが、結果的に得点は伸びます。
夏期講習にかけるお金がない場合の考え方
「夏期講習に行きたいけれど、経済的に難しい」という悩みは珍しくありません。結論から言えば、お金がないことは受験において決定的な不利にはなりません。むしろ、お金をかけられないという制約が、優先順位を厳しく考えるきっかけになることもあります。限られた資源で戦う設計は、受験では有効に働きます。結論から先にお伝えしておきます。
理由は、これまで説明してきたとおり、受験の本体が参考書の自習にあるからです。青チャートは2,000円台で買えます。10万円の講習1セットと、2,000円の参考書1冊。仕上げたときに点数になるのは後者です。参考書を完璧にした受験生が、講習を5講座取って復習していない受験生に負ける理由はありません。重要なのは支出額ではなく、仕上げた問題集の数です。
お金をかけずに環境を整える方法もあります。学校の自習室、公立図書館の学習席、無料の夏期補習など、費用ゼロで使える選択肢は意外に多いものです。竹内個別には、宅浪で毎日10時間以上勉強していた生徒(めいさん)がいました。英語の偏差値36、数学42という状態でした。そこから計画管理を取り入れ、英語60(+22.3)、数学62(+20.2)まで伸ばしています。最終的に岐阜大学看護学部に合格しました。
この事例が示しているのは、足りなかったのはお金でも時間でもなく、計画だったということです。10時間勉強できる時間はすでにあったわけですから、追加投資すべきだったのは講習ではありませんでした。必要だったのは、その10時間をどこに使うかを決める設計でした。お金の問題として捉えると、本当の課題を見誤ります。
▶ 毎日10時間勉強しても伸びなかっためいさんが岐阜大学に合格するまでの対談を読む
講座を選ぶ場合の絞り込み方

それでも講座を取ると決めたなら、選び方が結果を左右します。ここでは3つの基準を紹介しましょう。パンフレットを開く前に、この基準を決めておいてください。パンフレットを見てから考え始めると、魅力的な講座名に引っ張られてしまいます。基準が先、講座は後という順番を守りましょう。基準が先、講座は後という順番を守ってください。
基準1:詰まっている箇所から選ぶ
「英語が不安だから英語」という選び方は避けてください。不安は科目単位ではなく、単元単位で存在するからです。英文法のどこが抜けているのか、数学のどの分野で失点しているのかを、模試の結果から特定してください。そのうえで、抜けている箇所に直接対応する講座だけを選びます。特定できないのであれば、その科目は講座を取らないほうが無難でしょう。
基準2:復習できる講座数に抑える
前述のとおり、授業時間と同じだけの復習時間が必要になります。1日の自習可能時間から逆算して、復習まで回せる講座数を先に決めてください。上限を決めてから選ぶのと、選んでから帳尻を合わせるのとでは、結果がまったく変わります。上限は「1日の自習時間の3割まで」など、具体的な数字で決めておくと守りやすくなります。
基準3:レベルが合っているか確認する
講座には難易度設定があります。背伸びしたレベルを取ると、授業についていけず復習の負担がさらに重くなるでしょう。逆に易しすぎると、知っている内容に貴重な時間を使うことになります。迷ったときは、いま使っている参考書と同じレベル帯を選ぶのが安全です。講座名の華やかさではなく、扱う問題のレベルで判断してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 高校生の夏期講習の費用はいくらですか?
A. 大手予備校の場合、1講座あたり16,000円〜29,800円が目安です(河合塾は90分×5講で22,700円・税込/代々木ゼミナールは90分×4回で16,000円/駿台予備学校は19,900円〜29,800円。2026年7月時点)。高3が主要3科目に志望校別対策などを加えて5講座受講すると総額は約10万円、複数講座では10万円〜30万円になるケースが多くなります。
Q2. 高校生でも夏期講習だけ通えますか?
A. 通えます。多くの予備校が1講座単位での申し込みを受け付けており、通年で在籍していなくても受講可能です。ただし塾生価格が設定されている場合があり、河合塾では一般生22,700円に対し塾生22,200円と差がつきます。また自習室の利用可否は予備校ごとに条件が異なるため、環境目的で申し込む場合は事前確認が必要です。
Q3. 夏期講習は意味ないと聞きますが本当ですか?
A. 「意味がない」というより「復習しなければ意味がなくなる」が正確です。90分の授業を定着させるには最低でも同程度の復習時間が必要で、5講座取ると授業37時間+復習37時間の計74時間が必要になります。復習が回らないまま次の授業が来る状態になると、受けただけで終わってしまいます。講座数を絞れば有効に機能します。
Q4. 高3の夏から塾に通うのは遅いですか?
A. 遅くはありません。竹内個別には高3の夏以降に入塾して筑波大学に合格した生徒(入塾時E判定)がいます。ただしこの時期の塾は「授業を増やす場所」ではなく「残り時間の使い方を設計し直す場所」として使うのが効果的です。志望校に必要な参考書の残量と、共通テストまでに確保できる時間を数字にしたうえで判断してください。
Q5. 夏期講習を取らないと周りに差をつけられませんか?
A. 差がつくのは講習を受けたかどうかではなく、夏に勉強量を確保できたかどうかです。夏休みに頑張れば約400時間の勉強時間を確保できますが、5講座の講習が占めるのは約37時間にすぎません。残りの9割をどう使うかのほうが結果への影響は大きく、講習を取らずに参考書を仕上げた受験生が不利になる理由はありません。
Q6. 夏期講習にかけるお金がありません。どうすればいいですか?
A. 経済的な制約は受験の決定的な不利にはなりません。受験の本体は参考書の自習であり、青チャートなど主要な参考書は2,000円台で購入できます。学校の自習室、公立図書館の学習席、学校が実施する無料の夏期補習など、費用ゼロで使える環境も選択肢に入れてください。優先すべきは講習の受講より、参考書を仕上げる計画を持つことです。
Q7. 高1・高2でも夏期講習は必要ですか?
A. 高3以上に優先度は下がります。高1・高2の段階で重要なのは、英語と数学の基礎を積み上げることであり、これは市販の参考書で十分に対応できるからです。特に英語は長期的な積み上げで伸びる科目のため、早い時期から単語・文法・解釈・長文の順で進めることを竹内個別では推奨しています。講習より、日々の学習習慣を作るほうが効果的でしょう。
Q8. 学校の夏期補習には行くべきですか?
A. 費用が無料または安価であれば、検討する価値は十分にあります。判断のポイントは、参加によって自習時間がどれだけ削られるかです。午前中で終わる形式なら午後をまるごと自習に使えますが、1日拘束される形式では自分の参考書が進みません。時間割を確認し、自習との両立が可能かで判断してください。
まとめ
高校生の夏期講習は、基本的に必要ありません。受験勉強の本体は、志望校に必要な参考書を自習で仕上げる作業であり、講習はその総量を減らしてくれるわけではないからです。むしろ復習のコストが重く、受けただけで終わるリスクがあります。夏に差がつくのは講習を受けたからではなく、勉強量を確保できたからです。ここを取り違えないようにしてください。
費用面を整理すると、次のようになります。
- 大手予備校の1講座は16,000円〜29,800円(税込・2026年7月時点)
- 高3が5講座取ると総額はおよそ10万円
- 公立高校3年生の年間の補助学習費は約28万5千円(文部科学省・令和5年度)
- つまり夏の1ヶ月で年間予算の3分の1以上を使う計算になる
そのうえで、夏期講習を検討する価値があるのは、次の3つのいずれかに当てはまる場合です。逆に、どれにも当てはまらないのであれば、その予算は参考書と自習環境に回すほうが効果的でしょう。どれも「自習が回っていない」という共通点を持っています。
- 自習の習慣がまったくなく、強制的な枠組みが必要な人
- 独学で詰まっている分野が特定できている人
- 学校の補習など、無料または安価で受けられる場合
取らないと決めたなら、志望校から必要な参考書を確定させ、1冊を何周もし、進捗を日単位で管理してください。参考書は買った時点では1点にもならず、成績になるのは解けるようになったときだけです。10万円の講習より、2,000円の参考書を完璧にするほうが点数につながる場面は少なくありません。この順番を守れば、講習なしでも夏は十分に戦えます。
判断に迷う場合は、講習に申し込む前に、受験の全体像を知っている人に相談することをおすすめします。10万円を投じる前の30分の相談で、夏の使い道が変わることもあります。竹内個別でも、参考書と計画についての無料相談を実施しています。講習を売っていないぶん、取る・取らないの両方の立場から意見をお伝えできます。
著者:竹内個別戦略室 尾崎侑絃(岐阜大学医学部医学科卒業・医師免許保持)
監修:竹内個別塾長 竹内壮志(名古屋大学工学部卒業)


