一対一対応の演習のレベルと使い方|いつから始めるかを塾講師が解説
一対一対応の演習を手に取ったものの、「自分のレベルに合っているのか」「どう使えば伸びるのか」がわからない。そんな受験生は少なくありません。
結論から言えば、一対一対応の演習は青チャートやフォーカスゴールドを終えた人が、応用力を鍛えるために使う参考書です。正しい位置づけと使い方を知らないまま取り組むと、時間だけが過ぎてしまいます。
この記事では、一対一対応の演習のレベル・使い方・始める時期・前後のルート・伸びないときの原因まで、すべてまとめました。読み終えるころには「自分がやるべきか」「どう使えばいいか」が明確になっているはずです。
一対一対応の演習のレベルと位置づけ

一対一対応の演習はどのレベルの参考書か
一対一対応の演習(東京出版)は、大学への数学シリーズの中核をなす参考書です。難易度は教科書レベルの問題集よりもはるかに高く、チャート式でいえば青チャートの例題をひと通り解ける力がある人が対象になります。
偏差値の目安で言えば、河合塾の全統模試で55〜60程度。共通テストなら7割以上を安定して取れる実力が前提です。この基準に達していない段階で手を出すと、解説を読んでも理解できず挫折する可能性が高くなります。
網羅型ではなく「思考力強化型」
一対一対応の演習の最大の特徴は、「1問1テーマ」の構成です。チャート式や基礎問題精講のような網羅型参考書とは設計思想が異なります。
網羅型の参考書が「解法パターンを広く身につける辞書」だとすれば、一対一対応は「1つのテーマを深く掘り下げる専門書」に近い存在です。問題数は各分野50〜80題程度と決して多くありません。そのかわり、1問ごとに「なぜこの解法を使うのか」を考えさせる構成になっています。
竹内個別での位置づけ
竹内個別では、数学の参考書ルートを3ステップで組んでいます。
- STEP 1: 橋渡し問題集(基礎固める)
- STEP 2: 合格問題集(入試レベルの実践問題)
- STEP 3: 過去問(志望校の出題傾向に慣れて得点力を伸ばす)
一対一対応の演習は、STEP 2に位置する選択肢です。青チャートで標準問題を一通り押さえたあと、入試レベルの応用力を鍛える段階で使います。
ただし、一対一対応は解説が結構難しく「本番で思いつかないでしょ」と思わず声に出てしまうような解答になることが多いです。なので、強い要望がある方以外は推奨はしていません。竹内個別では、272という参考書を推奨することが多いです。
一対一対応の演習の正しい使い方

ステップ1: 例題を自力でこねくり回す(30分目安)
例題を読んだら、解答を見ずに自力で30分間取り組みます。一対一対応は合格問題集であり、網羅系問題集のように「10分考えてわからなかったら答えを見る」やり方は合いません。不格好でも構わないので、自分が思いついた解法をいくつか試しながらこねくり回してください。この「思考をこねくり回すプロセス」こそが、入試本番で初見の問題に対応できる力を鍛えます。
「どの分野の知識を使えそうか」「似た問題を解いたことがあるか」と頭の中で手がかりを探す時間が、思考力を育てます。これは筋トレと同じで、負荷がかかる瞬間にこそ力がつくのです。
ステップ2: 解答を読み「なぜその解法か」を言語化する
30分取り組んでも解けなかったら解答を読みます。ここで大切なのは、答えを写すことではありません。「なぜこの解法を選んだのか」「自分の試した解法はどこで行き詰まったのか」を振り返り、自分の言葉で説明できるようにすることです。
たとえば「この問題で置換積分を使うのは、被積分関数に合成関数の微分の形が見えるから」というように、解法選択の理由を言語化してください。ノートの余白に1〜2行で書き残すだけで十分です。
ステップ3: 演習題で「再現力」を確かめる
一対一対応の演習には、各例題の下に演習題がついています。例題で学んだ解法の核を、自力で再現できるかを確かめるステップです。
演習題が解けなかった場合は、例題の理解が不十分なサインです。もう一度例題の解法を確認し、「どこで判断を間違えたのか」を特定しましょう。
ステップ4: 解けなかった問題に印をつけ、3日後に再挑戦
解けなかった問題には必ず印をつけます。そして3日後に再挑戦してください。1週間後ではなく3日後にする理由は、記憶が薄れきる前に復習した方が定着率が高いからです。
2回目も解けなければ、さらに印を追加します。3周目以降は、印が2つ以上ついた問題だけに絞って回すことで、効率よく弱点をつぶせます。
やってはいけない使い方
以下の使い方は時間を浪費するだけなので避けてください。
- 解答を読んで「わかった気」になり、すぐ次の問題に進む
- 1冊を最初から最後まで通しで3周する(苦手な問題が埋もれる)
- 別解を全パターン暗記しようとする(入試で使う解法は1つで十分)
一対一対応の演習はいつから始めるべきか
高2の秋〜冬スタートがベスト
理想的な開始時期は、高2の秋(10月ごろ)です。青チャートのIA・IIBを高2の夏までに完走できていれば、秋から一対一対応に移行する余裕があります。
高2の秋から始めた場合のスケジュールは以下のとおりです。
- 高2の10〜12月: 一対一対応 数学IA
- 高2の1〜3月: 一対一対応 数学IIB
- 高3の4〜7月: 一対一対応 数学III(理系のみ)
- 高3の8月以降: 過去問演習へ移行
高3の春スタートでも間に合うか
高3の4月から始める場合、IAとIIBを夏休み前(7月中)に終わらせる必要があります。1日2〜3題ペースで進めれば、3か月で1冊は完走可能です。
ただし数学IIIが必要な理系の場合、高3の春スタートだと数学IIIまで手が回らないリスクがあります。数学IIIは計算量が多く、現役生が取りきれない分野の代表格です。数学IIIが必要な人は、できる限り高2のうちに一対一対応のIA・IIBを終わらせておくことを強く推奨します。
「青チャートが終わっていない」人はまだ早い
一対一対応を始める前提条件は、青チャートまたはフォーカスゴールドの例題を8割以上解けることです。この条件を満たさないまま一対一対応に進むのは、基礎工事が終わっていない土地にビルを建てるようなものです。
チャート式のレベルと正しい使い方を確認し、まずは青チャートを仕上げることを優先してください。
一対一対応の演習の前後に何をやるか(参考書ルート)

一対一対応の「前」にやるべき参考書
一対一対応の前に取り組むべき参考書は、網羅系の問題集です。
- 黄チャート → 青チャート(竹内個別の推奨ルート)
- 基礎問題精講 → 青チャート
- フォーカスゴールド(学校配布の場合はそのまま使用)
いずれのルートでも、「標準レベルの解法パターンを一通り身につけた状態」が一対一対応に入る条件です。大学受験の数学参考書ルート全体像も参考にしてください。
一対一対応の「後」にやるべきこと
一対一対応を完走したら、次は志望校の過去問演習に入ります。
- 地方国公立・MARCH志望: 一対一対応はやる必要なし。青チャートを完走したら過去問へ進めば十分
- 旧帝大・早慶志望: 一対一対応のあとに「新数学スタンダード演習」や「やさしい理系数学」を挟む選択肢もある
- 東大・京大・医学部志望: 「新数学演習」や「ハイレベル理系数学」まで視野に入る
ただし、参考書を増やしすぎて完走速度が落ちるのは本末転倒です。竹内個別では「完走速度が合否を分ける」と指導しています。1冊を中途半端にするくらいなら、一対一対応のあとすぐに過去問に入る方が効果的です。
文系と理系でルートは変わるか
文系の場合、一対一対応はIA・IIBの2冊で完結します。理系は数学IIIが加わるため、全体で3冊(6分冊)になります。
文系で数学を武器にしたい人には、一対一対応は非常に効率の良い選択肢です。問題数が絞られているため、英語や社会に時間を残しながら数学の応用力を上げられます。
「何周しても伸びない」を解決する裏の思考回路

なぜ何周しても模試で解けないのか
一対一対応を3周したのに模試で点が取れない。この悩みを抱える受験生には、共通する原因があります。それは「解法をパターン暗記している」ことです。
パターン暗記とは、「この問題が出たらこの解法」という1対1の対応を覚えるやり方です。一対一対応という参考書名と皮肉な一致ですが、問題と解法を1対1で暗記するだけでは入試本番で通用しません。
入試問題は、複数の分野が融合した形で出題されます。見たことのない問題設定でも正しい解法を選べるようになるには、「なぜその解法を選ぶのか」という判断基準を身につける必要があるのです。
竹内個別の「裏の思考回路」メソッド
竹内個別では、この判断基準を「裏の思考回路」と呼んでいます。
表の思考回路とは、解答に書かれている式変形や論理展開のことです。一方、裏の思考回路とは「なぜその解き方を思いついたのか」という、解答には書かれていない思考プロセスを指します。
たとえば、ある積分の問題で部分積分を使う場面があったとします。表の思考回路は「部分積分を適用して計算する」ですが、裏の思考回路は「被積分関数が"微分で簡単になる関数"と"積分できる関数"の積だから、部分積分を選んだ」という判断の根拠です。
この裏の思考回路を1問ごとに言語化するトレーニングを積むことで、初見の問題にも対応できる力が育ちます。
実際に偏差値が伸びた生徒の事例
数学の偏差値を42から62まで伸ばして岐阜大学看護学部に合格しためいさんは、まさにこの裏の思考回路を徹底した生徒です。最初は解法パターンを覚えるだけの勉強法でしたが、「なぜその解法を選ぶのか」を毎回言語化するトレーニングに切り替えてから、模試の成績が急上昇しました。
また、偏差値40台から東京学芸大学に合格したSくんも、基礎の完走速度と裏の思考回路の習得を両立させたことで、短期間での逆転合格を実現しています。
独学で裏の思考回路を身につけるのは簡単ではありません。自分では「理解した」と思っていても、実際には表面的な理解にとどまっているケースが多いからです。第三者のチェックが入ることで、理解の抜け漏れを早期に発見できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 一対一対応の演習と青チャートはどちらを先にやるべきですか?
青チャートが先です。一対一対応は青チャートの例題レベルを理解している前提で書かれています。青チャートで標準的な解法パターンを身につけてから、一対一対応で応用力を鍛えるのが正しい順番です。
Q2. 一対一対応の演習だけで旧帝大に受かりますか?
数学の基礎力次第です。青チャート+一対一対応を完璧に仕上げれば、北大・東北大・九大レベルの数学には十分対応できます。ただし東大・京大の場合は、さらに上のレベルの演習が必要になることもあります。完走速度を意識し、過去問で実力を確認しながら判断してください。
Q3. 一対一対応と数学272はどちらがおすすめですか?
竹内個別では272を推奨しています。一対一対応は解説が難しく、本番で再現しにくい解法が多いためです。ただし学校で一対一対応が配られている場合はそのまま使って構いません。大切なのは教材選びに時間をかけることではなく、1冊を確実に完走することです。
Q4. 一対一対応の演習は独学でも使えますか?
解説が丁寧なので、独学でも進めること自体は可能です。ただし「なぜその解法を選ぶのか」という裏の思考回路を自力で言語化するのは難しく、パターン暗記に陥りやすい点に注意が必要です。勉強計画の立て方を参考に、進捗管理を徹底することをおすすめします。
Q5. 一対一対応の演習は全問やるべきですか?
時間に余裕がある場合は全問取り組むのが理想です。しかし高3の夏以降に始める場合は、苦手分野や頻出分野に絞って取り組む方が現実的です。入試までの残り時間と相談しながら、優先順位をつけてください。
Q6. 文系でも一対一対応の演習は必要ですか?
志望校によります。文系数学で高得点を狙いたい場合(一橋大・早慶など)には、一対一対応は非常に有効な選択肢です。一方、共通テストレベルで十分な大学を志望する場合は、青チャートの完走を優先する方が効率的です。
Q7. 数学IIIの一対一対応が終わりません。どうすればいいですか?
数学IIIは計算量が多く、現役生が最も取りきれない分野です。入試まで時間がない場合は、微積分の計算問題と頻出テーマ(極限・面積・体積)に絞って演習してください。残りの分野は過去問演習で補う方が実戦的です。
まとめ
一対一対応の演習は、青チャートやフォーカスゴールドを完走した人が、応用力を一段引き上げるための参考書です。
この記事のポイントを整理します。
- レベル: 偏差値55〜60以上が前提。青チャート完走後に取り組む
- 使い方: 例題を自力で考え、解法選択の理由を言語化し、演習題で再現する
- 開始時期: 高2の秋がベスト。高3の春でもIA・IIBなら間に合う
- ルート: 青チャート → 一対一対応 → 過去問が基本。学校配布なら買い替え不要
- 伸びないとき: パターン暗記から「裏の思考回路」の言語化に切り替える
大学受験の勉強法まとめでは、数学以外の科目も含めた全体戦略を解説しています。科目横断で計画を立てたい人はあわせて確認してください。
数学の成績が伸び悩んでいる人や、数学で1桁の点数から大逆転したなのさんのように短期間で結果を出したい人は、裏の思考回路を身につけるトレーニングが突破口になります。
著者: 尾崎侑絃(岐阜大学医学部卒・医師)
監修: 竹内壮志(名古屋大学工学部卒・竹内個別代表)

